プロジェクトマネジメント勉強会

私の経験上、プロジェクトマネジメントで大切だと思っている考え方を定期的に発信します。

早く開発するためには

どんなシステム開発でも、早くできることに越したことはありません。早く開発すれば、早く新サービスを世の中に発表することが出来ます。改善対応であれば、効果の早期刈り取りが出来ます。早く開発することが出来れは、良いことばかりなのです。

しかし、そうは問屋が卸しません。開発費用がかかれば、それなりに開発期間が必要となります。投入工数と開発期間の関係は、計算式で示されているのです。

標準工期(月数)=投入工数の立方根×2.5、という一般的な計算式があります。この式を使うと1,000人月のプロジェクトだと、25ヵ月かかることになります。各会社で、過去実績から導き出した独自の計算式を使っているケースもあるかと思います。

この計算式を使いユーザーに25ヶ月かかると説明しました。ユーザーから、もっと早く開発してよと言われ、何の根拠もなく精神論だけで工期を短縮してしまいました。この判断は危険なんです。工期を短縮すればするほど、プロジェクト失敗可能性があがると言われています。もちろん、工夫して工期を短縮する努力は必要ですが、2分の1など大幅に短縮することは困難です。今後、生成AIの活用で開発スピードの向上は期待できるかも知れませんが、今現在ではそのような話は私の耳には届いていません。

ここまでは、開発期間を短くするのは難しいという話でした。でも、早く新サービスを世の中に出したいのです。どうすれば良いのでしょうか?

ひとつの答えは、要件定義工程の短縮です。要件定義で時間がかかる理由を考えてみましょう。それを解決すれば、短縮できるはずです。

① 夢が大きすぎる

要件定義書に壮大な夢が語られているケースがあります。例えばAmazonのようなネットショッピングサイトを開設するプロジェクトがあったとします。顧客のSNSの履歴をすべて検索し、その人の嗜好にあった商品を0.5秒で10個表示したい。しかも1,000万人が同時にアクセス出来るようにという要件が出てきました。これ、やろうとしたら出来るかも知れませんが、めちゃくちゃお金と時間がかかります。こんなシステムを作って果たして費用対効果があるのでしょうか?これを現実に落とし込むのに時間がかかるのです。最初からユーザーに自由に考えてもらうと夢が出てくることがあります。システム担当は夢を叶えるのが仕事だと思っているユーザーもいるかも知れません。考える前に費用対効果などの現実を見る方向に誘導することが大切です。一度夢を出してしまったら、夢をたたみたくなくなるのです。

② お金が足りないとの戦い

マクドナルドで、ビッグマックを100円で売ってくれと言っても売ってくれません。また、そんなことを言う人もいないでしょう。でも、システム開発の世界ではあり得るのです。オーダーメイドかつ形が見えない商品ですから、値段が想像し辛いのです。1億と値付けしても、そんなにかからないでしょ?もっと工夫してよって話になり、なかなか折り合いがつかないのです。多少の努力は出来るかも知れませんが、8割引にはならないのです。何かしらの要件を諦めるしかありません。

①②を回避出来ればスピードUPします。必要なのはシステムリテラシー。開発側が要件定義段階から噛み込むことが重要なのです。システムを知った上で業務やサービスを知る。これが最強なのです。